ボンボンと悪夢 星新一

「ボンボンと悪夢」
本のタイトルが怪しげで星新一らしい。

星作品は、燦々と照りつける太陽の下での出来事というよりも、夕闇、酒場、秘密、陰謀、不可思議な世界がよく似合う大人の物語です。

ところで、「ボンボン」ってなんのことだろうか。やはりゼンマイ仕掛けの柱時計の時刻を知らせるあの音のことだろうか。
それは小さな時計ではなく、大きな時計。大きければ音も「ボーンボーン」と低温で響くはずです。
文字盤にはローマ数字、背丈ほどもある木製の時代がかった焦げ茶色の柱時計、そんなイメージがあります。

今では見かけなくなりましたが、子供の頃、夏も終わりの夕暮れ時、薄暗い部屋で、ひとり柱時計のあの音が響くと、ちょっと寂しげな郷愁を感じました。

単行本は昭和37年刊行とあります。
僕は一歳。懐かしいなぁ。
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収録された作品は36編あります。

「賢明な女性たち」という作品が僕は好きですね。
詳細は書きませんが、地球の女性が居なくなり宇宙からの女性に入れ替わる話です。
何故か、胸がスカーッとします。なぜだろうか。ナゼだろうね。入れ替わってしまえなんて、いぇ、妻のことは言ってませんよ。

特に初期の作品は結末部の「キレ」の鋭さが際だっています。
作を重ねるにつれ「キレ」もさることながら読後感が深まるのですが、これが作家としての成長ですね。

星新一の作品は、その長い執筆期間の中で何度か変化してきています。
最終的には氏が求めていた「寓話」といえる作風に向かって行ったようです。

こちらは文庫版です。真鍋博のデザインは本当に星作品にぴったりです。

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文庫版裏面です。とても良い。
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