本作品はイソップ寓話やシンデレラなどのパロディほか、どちらかと言うと短めなショートショートが並んでいます。星新一のパロディはとても意地悪だ。
香代子夫人によれば、生前星新一氏は「寓話作家」という肩書きを好んだといいます。小説ではなく「寓話」だと。
星新一氏が晩年「人生を肯定的に総括できる」ために欲していた賞賛は、文学的評価などではなく、小説などよりも遥かに長く広いスケールで読まれ語り継がれていくアイデアとプロットなのかもしれない。
少なくとも「文学的評価」よりは…
これは、浅羽通明が「星新一の思想」で書いていることですが、最相葉月が、星新一が必要としたのは「文学的評価」だった。との見解に異を唱えたわけです。
星新一は、日本の「SF作家第一号」であり、SF作家という職業を作り、日本SFというジャンルを作った。
星新一がいたからこそ、小松左京も筒井康隆も新井素子もそのステージで様々な傑作を発表し、才能を開花できたのです。(星新一の思想より)
浅羽通明氏の評論は独特で、簡単には認めたくない内容も多いのですが、この点については、ファンとしてはとても嬉しい言葉です。
日本の文学賞なんて小さい小さい。
とは言え、現世での評価も欲しい、そして歴史的な評価も得たい。と言うのが本当のところではないかと僕は思うのですが、これは本人に聞かなければわかりません。
星新一は晩年、その主人公は一層、没個性化し結末も曖昧?な、誰にでも何とでも解釈できる作風に変化してゆきます。
268頁の文庫本に358の物語が収録されています。
星新一は、このような後世に残る作品をめざしたのだろうか。