いくさ無き世の実現を 星新一

NHK大河ドラマ「徳川家康」
戦無き世の実現を夢見て国家統一を成し遂げる物語。僕は毎回楽しみに見ています。

星新一の小説の題材には、世界平和や戦争の根絶を目指したものがあります。
ユートピアSFに分類されるのでしょうか。

デビュー作「セキストラ」は、性的満足を与える装置を開発し、その装置を世界中に普及させることにより、争いが激減し、人々は穏やかに平和になる。国家間の戦争もなくなり、世界連邦が成立する。

「セキストラの冒頭」
ここに伏線があり、最終で謎も解ける。新聞記事の切り抜きを集めた形で作品を書き上げています。

img351

「生活維持省」は、コンピューターが無作為に選んだ人間を、役人がリストに従い毎日殺すことにより、人口を調節し、食料不足や貧困を無くし、平穏が保たれる社会。

「白い服の男」は、戦争を想起する言葉、書物、歴史的遺産などすべての事柄から「戦争」に関する記憶を根絶し、平和な世界を維持しようとする物語です。

img348

果たして、政府又はコンピューターによって一方的に形作られた「平和」が本当に幸せな世界なのだろうか。

ユートピアの陰のディストピア、星新一が書き上げる平和には、プロパガンダに操られる暗黒な風景が見え隠れしています。