地球になった男 小松左京

表題作「地球になった男」「地には平和を」「日本売ります」など初期の傑作作品集です。

昭和46年(1971年)初版
新潮文庫版
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「地球になった男」
なりたいものになれる能力に気付いた男が、女性に変身したり、ある時はゴジラになり、とうとう得体の知れない怪物に変身し、世界中を破壊し尽くす。そして最後にひとり残った男は地球に変身した話。

実は星新一にも、様々なものに変身する小説があります。
「おかしな先祖」に収録されている「オオカミそのほか」という作品です。

こちらは自主性のない男。
噛まれたものに変身してしまう。
オオカミに噛まれれば、オオカミに。ヘビに噛まれればヘビに…
最後は地面の割れ目に足を挟まれてしまう。これは地球に噛まれたことになり…
という話しです。

昭和49年(1974年)初版
講談社文庫
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同じ変身ものですが、本人の意志でなるのか、自主性がないために変身するかの違いがあります。

そして、二つの作品の大きな違いは、深刻さにあります。
ここに2人の作風の違いが表れています。

星新一作の主人公は、どこかユーモラスで、お気楽で、道徳心のかけらもない男で思うがままに変身しまくります。

小松左京の作品は、世界中を荒らし回り、最後に彼だけが生き残り、それでも悲哀を消し去ることのできない虚無感、孤独感に包まれます。