仲間内でのばか話で、飛び抜けて面白いのは、星新一、小松左京、筒井康隆の創生期のSFを牽引してきたこの三人です。
昭和天皇が崩御された際、SF仲間の集まりで、新元号はどうするかという話題になったと言います。
明治、大正、昭和すべてが製菓会社の名前なので、筒井康隆が、次は「森永」がよいと言うと、小松左京は「モロゾフ」にしろと言い、星新一が「ロッテオバQガム元年」などとキチガイみたいなことを言い出して、全員腹を抱えたものだ。
というエピソードが筒井康隆のエッセイにありました。
ちなみに「モロゾフ」とは神戸にある製菓会社だそうです。
そして、このような「ばか話」は、その場の雰囲気や気持ちが、カオス状態になっていたからこその抱腹絶倒の笑いになったのだと思います。
その場にいた人たちは「後で思い出しても良く覚えていない」ようなことで大笑いしていたことが多かったみたいです。
孤独な執筆活動の合間の、このような仲間内でのばか話が、当時のSF作家には大切だったのだろう。
小松左京は、星新一とのばか話のために、毎週、大阪から上京してきたといいます。
社会的にも、文壇からも、なかなか評価されず、目に見えない読者からの支持だけではその孤独感、不安感に堪えきれなかったのではないだろうか。
SFの「蜜月の時代」、SF仲間はみんな片寄せあって、寂しさを紛らわしていた時代です。