短編集「未来イソップ」に収録された本作品。
大切に大切に育てた17歳の男の子。
何でも欲しいものは与え、やりたいことはやらしてあげたためか「誰が産んでくれと頼んだ。」とこれ以上無いほどにわがままな不良少年に育ってしまった息子。
遊ぶ金をくれと両親の前で怒鳴りながら金を要求する。部屋のテーブルを持ち上げてガラス戸に投げつける。
そんなどうしようもない息子に対して「けがをしたら…命を大切にして…」両親は息子の身体と健康を案じて、泣きながらも息子のわがままに応じてしまう。
そして大ドンデン返しの結末が訪れます。これ以上ない残酷な結末の話です。
子供の家庭内での暴力や非行の数々にはるかに勝る社会の恐ろしさ、両親にとっては、これだけ悪態をつく息子に少し気は紛れるかもしれない。
話は横道にそれますが、不良少年の常套句「誰が産んでくれと頼んだ。」という捨てぜりふ的なこの言葉です。
物事は時に「逆も真なり」ということがありますが、この「誰が産んでくれと頼んだ」については、「逆が真なり」が仏教哲学の真理です。
時々、過去の出生前後の記憶を持つ子供が「産まれる前の天国では、産まれる順番も決まっていて、僕の前にお姉ちゃんがいたんだけどすぐに帰って来ちゃったんだ…」
最初の子が流産だった、などという実話もあります。
だから、望んで約束して産まれて来るんだと僕は納得しています。
星新一は「殺人の描写はしない」という自分に課したルールのもと作品を書いていましたが、そんなもの吹っ飛びます。
星新一は、そんな子どもの味方の優しい作家ではありません。
筒井康隆とは違い「淡々と」人を殺します。文明も滅ぼします。