筒井康隆の父、筒井嘉隆氏は動物学者でした。
ウィキペディアによると、天王寺動物園長時代、戦争中、空襲で動物が檻から逃げ出す危険性が指摘され、殺さざるをえなくなったが、食糧事情がよくない時代でもあり「どうせ殺すなら食べてあげたほうが良い。」と料理し食べたといいます。
さすが筒井康隆のおとうさん。
その父を持つ筒井康隆の博物誌です。さらに私説なので期待できますね。
この本の注目すべきはフランス装の製本にあります。
僕はこの本を手にするまではそんな製本があることすら知りませんでした。
箱入りの本書を取り出して…何だこりゃ!
フランス製本とは、アンカット本で本来、一枚一枚捲れるようにカットしてあるところをカットせずに製本されており、読者が自分でカットして読むんだそうです。
この私設博物誌は遊び心で作ったのだと思いますが、勿体なくて未だカットされずにここにあります。
文庫本で読んでいるから、本書はそのまま切らずにコレクションです。
中央が筒井康隆で右がちょっとマッドな科学者のお父さん。
(文藝別冊 総特集筒井康隆より)
第一に「イボイノシシ」が登場します。とても臆病者だそうです。
博物誌といっても動植物をネタのエッセイなのだろう程度に読み始めたのですが、見事に裏切られました。
本格的に真面目に、そして筒井康隆らしく面白い内容の博物誌に仕上がっていました。
疑問点は父のアドバイスを受けながら書き上げたようです。
本書に登場する動植物に関する記述はもちろん事細かに正確ですが、そこから派生する様々な話しは、読者を飽きさせない面白いものばかりです。
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