ミステリー・SF研究家の日下三蔵氏の撰集を紹介します。
この撰集には、星新一の「処刑」が選ばれています。
夫人の星香代子さんのことばです。
「以前から私は星新一の悲しい作品を読む度、この人ってどうしてこのような話を思いつくのかと、泣いてしまうことがよくありました。
『処刑』は何度か読んだ筈なのに内容をよく覚えていなくて、今度読み直してやはり涙が出てしまいました。五十年前のものとは思えず、新しく書かれた作品のように感動し” この人ってどうして” と又思ったのでした。」
ご夫人の言葉にも感動します。
「処刑」は星新一の初期作品の傑作の一つです。
死刑判決を受け、流刑地となった火星に飛ばされた主人公。渡されたものは銀色の玉だけ。
その玉からはボタンを押す度に水が出てくるが、何回目かには爆発する、という処刑のための恐ろしい機械。
生きるためにはボタンを押し続けなければならず、しかしその度、いつ爆発するかもわからない恐怖と戦わなければならない。
いつまで続くかわからない、主人公の恐怖と安堵感の繰り返しを描きます。
このような良質のSFを読むと、「SFはひとりの人物ではなく、地球の悠久の歴史のほんの刹那を必死に生きる人間という類い希なる生き物を描いている。」という、星新一作品の真骨頂に感動します。
SF草創期からSF史を6巻に分類して発行しています。
僕は第一巻のみの所持です。
次は、「日本SF全集・総解説」
こちらは架空のSF全集の解説というコンセプトで作られた、過去に類例のない通史的作家紹介&ブックガイドとあります。
だから撰集ではなく、作品集の解説です。
各作家の本を読む際の「案内書」として便利かもしれません。
これがなかなかおもしろい。
SF関係の方々は本当にアイデア豊かで面白いことをしてくれる。