時をかける少女 筒井康隆

筒井康隆の代表作になってしまうのではないか、と筒井先生本人も心配するほどの人気があり、何度か映画化もされています。

1967年(昭和42年)初版
img303

原田知世主演で映画化されたのが最初ですが、爆発的なヒットでした。
撮影舞台は「尾道」
とても美しい映画です。

210425

1983年封切り。僕が22歳の時でした。

R (2)

僕にとっては「時をかける少女」と言えば、原田知世です。
映画館で二回みたからね。
正直なところ、その後のリメイク作品には興味がありません。

更に映画のサウンドトラックをカセットで買いました。

この小説は、中高生向けに書かれたジュニアSF、ジュブナイルです。

まぁ、子供向けSFなので…
筒井先生ももうご高齢ですから「もしこの作品が筒井康隆の代表作、最高傑作などと評価されたら…」
と、きっと心配なことでしょう。

こちらはBlu-raydisc版です。
久しぶりに観ました。

撮影の地、広島県尾道市の美しい風景、作品全体に流れる「上品さ」
主人公の少女から大人への成長。
そして劇中のタイムリープの描き方。何というか、SFネタを大袈裟に無駄遣いしていない、ハッタリが無いところが秀逸です。

もう、このような映画は作れないだろう。そのような意味においても名作です。

img632

その後なぜなのか「シナリオ・時をかける少女」を書いています。自分自身の小説をパロディ化しているのです。

こちらがその原稿
img354

映画撮影の中の演技者(つまりは原田知世たち)とその横で暴力不良学生たちとの「虚構と現実」が入り乱れる様を描いている点において立派な実験小説の体をなしています、がここまでドタバタでメチャクチャなシナリオを書かなくても。

まったくおとな向けの「時をかける少女」に仕上がってしまっています。
興味のある方は、短篇集「串刺し教授」に収録されています。

1985年(昭和60年)初版
img299

「時をかける少女」は映画化される前に「タイムトラベラー」というタイトルでテレビドラマ化されました。

昭和47年(1972年)、僕が11歳の時なのであまり覚えてはいませんが、楽しみに見ていたという記憶だけがあります。

o0640036014892808139

R (3)

「時をかける少女」が映画化される10年前。
この画像を見る限り、やはり10年の歳月を感じますね。
でも、単行本の雰囲気はまさにこのタイムトラベラー。

やはり、「時をかける少女」は名作ですよ、筒井先生。
どうしますか?

話は変わりますが、数日前にネット予約した最新作「カーテンコール」が届きました。
「これがわが最後の作品集になるだろう」と本の帯びにあります。
下に小さく「信じていません」と担当編集者のつぶやきが…

2023年10月30日初版
img302

ここのところ「新作を発表する度に、最後の…何々」とあります。

ちなみにこの最新刊は、予約の時点で既に重版決定だそうです。

いつだったか、筒井先生がおっしゃっていたのですが、人気作家だった大先生が今では生活保護を受けているという驚きの現実があるという。
本が売れない時代です。

そんな時代にあって筒井先生の本は売れ続けている。スゴいことです。
筒井康隆はスゴいことだらけです。

img304

ブックカバーの下はこんなデザインになっていました。(ビックリ)
やはり本は、紙で買わなきゃ、こんな楽しい思いはありません。

電子書籍なんてただの情報を読むだけ。プラスアルファは見あたりません。

2015年刊行
img300

こちらは「わが最高傑作にして、おそらくは最後の長編」とあります。

「時をかける少女」なんかより、今回の作品が絶対に傑作だよ。と世間に言いたいがために、何度も最後の傑作を発表しているのかも知れません。

先生は昭和9年生まれ、88歳になられます。本当にスゴいことだと思っています。

筒井先生の代表作が「時をかける少女」なのか、他の作品になるのかは分かりません。
これまで60年以上もの長きにわたり書き続けた作品の数々、役者として、ジャズマンとして…それらの偉業、誰もが認め
ることだと思います。

これからも、「最後の傑作…」をたくさん僕たちに届けて欲しいと願っています。

OIP~2