宇宙衞生博覽會 筒井康隆

筒井康隆の狂気爆発の作品集です。

1960年(昭和35年)、26歳で作家デビューした筒井康隆。
ブラックでドタバタな小説、役者の感性のスプラスティックな作品で、星新一とはまた違った才能の塊のような筒井先生です。

40代前半、いわゆる脂の乗りきった時期の作品集。

1979年(昭和54年)初版
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筒井中毒のファンには「垂涎の的」
文字どおりタラタラとよだれを垂らしながら手にする情景が目に浮かぶのですが、このような作品を嫌う人たちは世間に数多くいます。

きっと嫌う人の方が多数派かも知れません。
でも、僕にとってこの作品集は、目を反らしたくなるほどの出来映えです…ん?

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タイトルだけでも魅力的です。
ご覧ください。

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僕にとっての筒井康隆と言えば「狂気」です。

本書の目次を見ただけで、その「狂気」の物語を如何にSFにしあげているのか期待してしまいます。

星新一は、筒井康隆の初期短編集「にぎやかな未来」の解説で、
「かりに全人類が発狂するという事態にたちいたっても、ただひとり筒井康隆だけは取り残され、狂えないのではないだろうか」

「彼は薄々このことに気づき、狂気へのあこがれが高まり、あたふたし始めているのではないだろうか…」
とあります。

本当の狂人に「文学的狂気」は描けない。
筒井康隆は紳士であり教養人であり、極めて真面目でマトモである事が、インタビュー記事やメディア出演の際の受け答えからも分かります。
人格的基盤が揺らがないからこそ、変幻自在な狂気を描けるのだろう。
そんな筒井康隆が僕は好きです。

デビュー以来、同じ手法、同じテーマでの創作はしていないという筒井先生です。

89歳になられる筒井先生が、先日、最後の作品集、「カーテンコール」を刊行しました。
もう、ほとんどの小説手法は書き尽くしていて、アイデアが浮かんでも既に類似のものを作品にしているといいます。

「もう、小説は書かない。エッセイや日記は今後も続ける。」とおっしゃっていました。

とても寂しいことですが、SF創成期からの仲間は既に鬼籍に入ってしまいました。
筒井先生には無理をせずに少しでも長く文章を書いて欲しい。

蟹甲癬の原稿
筒井康隆の文字は綺麗です。
公開されることを意識しているのだろう。
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