火星年代記 レイ・ブラットベリ

レイ・ブラットベリ(アメリカ)
彼の最高傑作といわれている作品です。

1950年初版
(新版)
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地球人の火星への探索そして移住。それは、長い歴史を持つ火星人にとっては青天の霹靂、宇宙人来襲により火星人は…

この作品を読んだ星新一の日記には、次のようにある。
”昭和32年1月23日
晴。カゼをひいて、うちに寝ている。「火星人記録」を読む。こんな面白いのは、めったにない。”

これが星新一が作家に目覚めるきっかけだったらしい。
「火星人記録」とは「火星年代記」の古いタイトルです。

「宇宙冒険物かと思って読み始めたのだが、予想に反し、しっとりとした詩情の流れている作で新鮮な衝撃を受けた。
読後感を書き残しているのは、この本だけである」
と星新一はエッセイに記しています。

そして、その4ヶ月後、処女作「セキストラ」を書き上げています。

この作品が、同人誌「宇宙塵」に発表され、大下宇陀児の目にとまり、江戸川乱歩の編集する「宝石」に転載され、それをきっかけに作家デビューすることになりました。

「これは傑作だと思った。日本人がこういう作品を書いているということが、わたしを驚かせた…」
と江戸川乱歩のほめ言葉です。

「セキストラ」掲載にあたっての江戸川乱歩の紹介文の原稿

(出版社に直接出向いて、編集長に記念としてもらったといいます)
…きまぐれフレンドシップPART1より

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江戸川乱歩
江戸川乱歩

大下宇陀児
面白い作品があると「セキストラ」を、江戸川乱歩に強く進めた。

大下宇陀児

星新一は、SF新聞第2号(昭和44年6月)で、レイ・ブラットベリが極度な近視であり、それでも眼鏡を掛けたがらない性格にふれ、近視なるが故の風景の見え方、近視なるが故の孤独感を…、つまり僕たちにはあたりまえの風景が彼には幻影でしかなく、ぼやけた小さな世界が彼にとって現実であること。

その特殊な小宇宙から、ぼやけた眼で見つめる現実の世界を慎重に表現する際には「叙情的にならざるを得ない」
そこに彼の作風があるという、独自の推測をしています。
同じ作家として、作家の独自性を論じています。