日本SFの始祖「海野十三」
名前の読みは「うんの じゅうざ」
明治30年生
昭和24年没
逓信省電気試験所勤務
探偵小説家
空想科学小説家
科学者
海野十三
海野十三が空想科学小説を執筆したのは、昭和初期ごろから。
日本のSFが本格的に活動し始める30年も前のことです。
作品には、
・電気風呂の怪死事件
・千年後の世界
・火星魔
など多数
氏の著作には馴染みがなく、数編だけラジオの朗読コーナーで聞いたことがある程度でした。
この” 朗読による読書 ”は集中力と読書時間の減少した僕にはとても便利なものです。
最近では、YouTube からdownloadして楽しんでいます。
また、青空文庫にもありますから無料でダウンロードできる時代です。
アメリカと日本のSFの決定的な違いは、リビングにテレビが有るかないかの違いだ。と誰かが書いていました。
SFの描写風景には確かに大きな存在です。
今となっては、家電、自動車、電話機など、風景にこれらの物が写し込まれない作品は、どこか不自然な近未来小説になってしまいます。
その意味でも、高度成長期に始まった日本SFは、正に「時宜を得た」と言えるのではないだろうか。
残念ながら、海野十三氏のSFは、今となっては古めかしい。
やはり早すぎた才能だったのかも知れません。
本書に紹介されている、海野十三の著書「第五氷河期」から、
「地球に再び氷河期がやってくる。
その、兆候、第一は、へんに熱苦しい気温のことだ。冬だというのにまるで四、五月ごろの気温ではないか。それに、近頃、東京地方では、地震が頻発しているが、これもその前兆の一つである」
と、再び氷河期がやってくると主張しつづける老博士の演説があります。
これって、昨今の地球の状態と一致しませんか。
地球温暖化が叫ばれています。その元凶は炭素であると。その炭素をゼロにして温暖化を防がなければならない…と宣伝されています。
しかし、あまりマスメディアでは取り上げられませんが「今は氷間期にあたり、徐々に氷河期に向かっている」と主張する科学者も存在します。
科学的な真偽は置いといても、興味深い箇所です。
読後感としては、アイデアや冒頭部分は面白かった。これは長編小説で書き上げるべき題材と僕は思います。
結末は、どんどん萎んでいってしまいましたから残念です。
小松左京の日本沈没程の枚数と基礎となる情報資料がなければ…
筒井康隆なら短編でも書き上げてしまうだろうけど。
海野十三の時代、SFは探偵小説の変わり物程度にしかみられていませんでした。
あの頃は、SFのFはFictionのF、SFのFはFantasyのF……などとSF表現が自由に浸透した時代ではありませんでした。
また、日本SF黎明期の蜜月時代のような「何かといえば集まり、片寄せあい、慰めあうSF仲間」もいなかった。
もちろん、ファンジンも無かった。
そんな時代に海野十三は、SFを愛し、SFが世間に普及する時代を夢見ていた。まさに孤軍奮闘。
でも、彼の生存中、その夢はかないませんでした。
そしてそのSFが、才能豊かな若者たちの手で大きく花開くまであと30年待たなければなりませんでした。
今のSFの興隆は、海野十三たち先駆者の努力があってのこと、彼を忘れてはいけませんね。
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