夜明けあと 星新一

島崎藤村の小説「夜明け前」
幕末から明治にかけ世の中が目まぐるしく変化していくなか、時代に翻弄されつつも理想に向かうが、潰されて精神を冒されていく主人公を描いています。

星新一の「夜明けあと」
タイトルは似せているようですが、内容はまったく独自の構成になります。
幕藩体制が崩壊し、まったく新しくなった明治。新聞記事の切り抜きにある世の中の出来事をとおして世相の移り変わりを辿ります。

1991年(平成3年)刊行

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「ラジオもテレビも週刊誌もなかった時代。新聞は娯楽性を持つ必要があった。」と本書あとがきにあります。
ただの事実の羅列、新聞記事などの興味深い出来事を時系列に並べただけの作品。そこに文明開化の世の中の変化が見えてきます。

*天皇、断髪なさる。皇后も少し前にオハグロをおやめになった。(明治6年)
*夫は人力車、妻は針仕事で生活。ある日、妻が帰りに人力車に乗ったら、引く男が夫。代金は払ったという。(明治6年)
*相撲の親方の多くが、マゲを断髪にする。いずれは力士たちもか。(明治9年)
*関西で人力車が増え、乗り賃の値下げ競争。東京にこたつ付き人力車出現(明治9年)
さらには人生相談のコーナーを載せ、当時の夫婦の家庭での悩みなどから世相を垣間見ることもできる。

当時の人たちにとっの新聞記事は、現代のテレビのようなリアリティーをもって迎えられ、娯楽としての楽しみ方もあったのだろう。

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