本のタイトルは「人造美人」言わずと知れた名作「ボッコちゃん」の単行本です。そして星新一にとっての初めてのショートショート集です。後年、文庫版を発売するにあたり、本のタイトルを「ボッコちゃん」に改めました。本の装丁は怪しげな都会の夜の裏通り。人知れずこの街の一角で事件が進行している……この雰囲気、世界観が僕にとっての星新一です。
氏の作品群は亡くなった後も再版が重ねられ、驚異的ベストセラーです。ただ、その装丁が徐々に子供向けになっていくことが、僕にとってはとても残念なところです。
1961年(昭和36年)発行

誰かの評論にあったのですが、SFという小説が出始めた頃、大学生たちは星氏の書籍をまるで哲学本でもあるかのようにポケットの差し込んで持ち歩いていたといいます。本の表紙や文字の大きさで作品の質は変わりはしないのですが、どうしても「子供向け」という、何か一段低い位置付けに見えてしまうのは僕だけでしょうか。
日本SF文学創成期の第一人者であり、ショートショートという形式の小説を完成させた偉大な功績を思えば、その評価はあまりにも低すぎると思います。氏が手にした賞は「日本推理作家協会賞」だけです。
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