ショートショート全集

5.0

著者名  小松左京
出版年  1995年
発行   勁文社
ジャンル ショートショート

収録194作品
「さんぷる一号」「衝突」「ある生き物の記録」「一生に一度の月」「三本のスキー」など。

長編作家タイプの小松左京が、ショートショートを量産していた時代がありました。小松左京は知らないことはないのではないかと思われるほどの博学で、その情報の引き出しの多さには定評がありました。その知識量で長編から短編まで幅広い作品を書き上げ、もちろんショートショートにもその才能は存分に発揮されました。


小松左京のバイタリティはブルドーザー、それも最新鋭のコンピューター付きブルドーザーです。
氏の作品で、知名度の高さで選ぶとすれば「日本沈没」です。1970年代の最新の地質学、物理学、地震学、そして世界情勢までふまえた上で、練りに練ってこの日本列島を太平洋に沈めました。
「さよならジュピター」では木星を爆破しようとしたり、「復活の日」では人類絶滅の物語を企てました。同じ終末SFを書いても、星新一や筒井康隆とは異なる、際立って壮大な物語を描きます。そこが小松左京の魅力のひとつといえます。。

さんぷる一号 1962年作
「このごろ大分太ったようだね」と所長は、僕を見すえながらいった。「何キロになった?」…
本著の一作目に掲載されている作品です。ちょっと長めで言葉のギャグがふんだんにちりばめてあるホラーです。読み終えての感想は”タイトルが巧いな”。

星新一が自身のエッセイで小松左京との作風の違いに触れていました。
その一つが、行動範囲です。星の登場人物はあまり動き回らない。部屋の中だけで完結することもしばしば。小松左京のそれは、とにかくエネルギッシュに動き回る。世界の隅々から宇宙まで。
それは作者の性格なのか。

この全集で改めて思うことは、アイデアが豊富だなということ。その引き出しの多さと作品の面白さに、ショートショートの魅力を堪能できる作品集です。

最後に本書あとがきで著者が紹介しているアメリカのショートショートをひとつ
『全世界の科学者があらゆる技術と資金を注ぎ込んで、世界で最大のコンピュータをつくった。
代表の科学者が、そのコンピュータに尋ねた。
「神はあるか?」
するとコンピュータは答えた。
「そうだ、今こそ神はある。」
慌てた科学者が、電源スイッチに手をのばそうとすると、彼の上に雷が落ちた。』

 

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