ボッコちゃん

5.0

著者名   星新一
掲載作品集 「人造美人」「ボッコちゃん」

バーのマスターの道楽で作られた「ボッコちゃん」、そのへんの人間以上に完璧に美人の女のロボット。ボッコちゃんとそのバーに通いつめ恋に落ちた青年の物語。よくある話、そしてこのうえなく恐ろしく悲劇的な結末を迎えます。
星新一には、ロボットの物語だけを集めた「きまぐれロボット」という作品集がありますが、ロボットものでは最初の作品であり、その秀逸さで際立っています。


特筆すべきは作中の客とボッコちゃんとの会話にあります。今までの小説でこんなやり取りは読んだことがありません。まさに新しい小説です。
ボッコちゃんは、見た目は人間以上に完璧な出来栄えですが、頭の中は空っぽです。
そのボッコちゃんと客との会話がまた不思議な冷たさに満ちています。
「名前は」「ボッコちゃん」
「としは」「まだ若いのよ」
「いくつなんだい「まだ若いのよ」
「だからさ…」「まだ若いのよ」
この店のお客は上品なので、だれもこれ以上は聞かなかった。

無機質なオオム返しの会話。客商売にありがちなベタベタなお世辞を言わない。そこに客達は惚れ込みさらに評判は高まった。
そして最後は、予期しなかった死の終末に向かいます。
こんな短い物語なのに、その読後感はジワーッと長く深く続きます。

ショートショートというとても短い形式の小説にまとめ上げられた作品に、これ以上の長いレビューは本末転倒、不粋の極みと怒られそうなのでこのくらいにして、後はぜひ手に取ってご自分で作品を堪能していただければ幸いです。


人造美人―ショート・ミステリイ (1961年)

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