ボンボンと悪夢

4.0

著者名  星新一
出版年  1962年(昭和37年)
発行   新潮社
ジャンル ショートショート

収録 36作品
「椅子」「友を失った夜」「賢明な女性たち」「宇宙のネロ」など初期傑作を多数収録。

「賢明な女性たち」という作品が僕は好きですね。
詳細は書けませんが、地球の女性が居なくなり宇宙からの女性に入れ替わる話です。
何故か、胸がスカーッとします。
なぜだろうか。ナゼだろうね。入れ替わってしまえなんて、いぇ、妻のことは言ってませんよ。

特に初期の作品は結末部の「キレ」の鋭さが際だっています。
最後にアッと言わせる意外な結末。著者はこれを落語に習ってなのか「オチ」と表現しています。
作を重ねるにつれ「オチ」に重きを置く作風から、読後感、つまり読み終えたあとにしばらく余韻が残り何かが癒やされたりする、そんなふうに作風に深みが増してゆきます。これが作家としての成長ですね。

星新一の作品は、その長い執筆期間の中で何度か変化してきています。
最終的には氏が求めていた「寓話」といえる作風に向かって行ったようです。

「ボンボン」ってなんのことだろうか。
やはりゼンマイ仕掛けの柱時計の時刻を知らせるあの音のことだろうか。
それは小さな時計ではなく、大きな時計。大きければ音も「ボーンボーン」と低温で響くはずです。
文字盤にはローマ数字、背丈ほどもある木製の時代がかった焦げ茶色の柱時計、そんなイメージがあります。
今では見かけなくなった懐かしいあの古時計、子供の頃、夏も終わりの夕暮れ時、薄暗い部屋で、ひとりあの「ボーン」という音が響くと、ちょっと寂しげな郷愁を感じました。

 

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