1980年代、角川春樹社長(角川書店)が仕掛けたのが「映画、小説、主題歌」をリンクさせ、その話題性で人気を得る「読んでからみるか 見てから読むか」のキャッチフレーズの戦略です。
新人女優をオーディションで発掘し、優れた小説と主題歌で映画化しヒットさせる。
その一環がここで紹介する作品です。
ねらわれた学園 眉村卓著
眉村卓のジュブナイルSFに分類される作品です。
監督は、大林宣彦氏。
学校を不思議な力で押さえ付ける生徒会、それに反抗する生徒たちとの戦い。もちろんSFですから「超能力」による戦いです。
1981年に薬師丸ひろ子が主演、そして主題歌は大ヒット曲、松任谷由実の「守ってあげたい」でした。
この映像化の問題点は、主人公が男性から女性になり、超能力が使えるという原作無視の点にありますが、この当時はこんな物です。薬師丸ひろ子をみたいか、みたくないかだけのことであり、作者の眉村卓が納得しているのであればいいでないか。僕は嫌だけどね。
そんな作品ですが、愚作か傑作かはこの際問題にはせずに「時代の参考」としてここに取り上げました。こんな時代もあったのです。
時をかける少女 筒井康隆著
こちらは筒井康隆の、これもジュブナイルSF小説の映画化です。
1983年の原田知世に始まり、実写とアニメで何度か映画化されています。それだけ魅力的作品なのだろう。
原田知世も、薬師丸ひろ子と同じくオーディションで選ばれ、映画主演と松任谷由実作の主題歌「時をかける少女」を原田知世自身が歌い大ヒットするというもので、アイドルとしても女優としても人気を博しました。
後に原作者の筒井康隆が「この作品が自分の代表作になってしまうのか…」と危惧するほどの社会現象でした。【時をかける少女_原作】
今、見返してもこの映画はいいですね。映像が日本的で素晴らしさしい。
原田知世の演技は、もちろんそんな上手とはお世辞にもいえないどころか、とにかく下手です。
それがいいというのがファン心理ですね。はい、僕の心理です。
オーディションで選ばれたばかりの少女が、そんな演技が出来るわけはありません。
あの当時はそんなもんでした。今はね時代が変わりました。やはり、幼年期からの経験が違うのだろう。歌にしても演技にしても最初から優れた子が多く登場しています。
でもやはりその才能は非凡であったことは、経験を積むに従い演技にしても、歌のしてもメキメキ良くなってきたことで分かります。
こちらも大林監督のメガホンで、少女からおとなへと成長の過程での初恋の相手(未来人)との出会いと別れ。
そして、その出来事の記憶をすべて消されてしまうという残酷さにもこころを痛めました。
これも思春期の物語の常套手段ですがこれでいいんです。
あのころまだ馴染みのなかった「ラベンダーの香り」に青春のほろ苦さを感じたものです。
タイムリープをする際の超能力描写もひかえめで、タイムパラドックスの生じる場面もさりげなく表現され、映画全体をとおして滑らかで暖かな物語進行なのが好ましかった。
撮影地は尾道。その幻想的映像はとても素晴らしく、坂の多いロケ地を巧く使った撮影はクオリティも高く、僕は映画館で2回見てしまい、さらには原田知世のファンクラブにも加入するという失態までしでかしてしまったのも今となってはいい思い出です。
原田知世バージョンが今の同年代の若者の心を捉えるかどうかは疑問符ですが、原作がしっかりしているからこそ、時代に見合ったシナリオで何度も上映されて、高評価を得ているのだと僕は思っています。
「お湯をかける少女」などというCMまで飛び出しました。
アイドルの女の子が大きなヤカンを手に提げて、向こうから駆けてくる。
あれはインスタント・ラーメンのコマーシャルだったかな。
筒井先生、やはりこの作品は先生の代表作の一つであることは避けようがありません。
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