著者名 星新一著、新井素子編
発行年 2007年(平成19年)
発行 角川書店
ジャンル ショートショート
収録54作品
「ボッコちゃん」「セキストラ」「盗賊会社」「妖精」「鍵」「午後の恐竜」など
なぜか中編小説の「殿様の日」も収録されています。
有名な作品は全て網羅されています。さらに選者の視点で忘れていた作品やまだ読んだことのない作品も沢山あります。
これから星新一を読んでみたいという方には入門編として、久しぶりに読んでみたくなった方には本を選ぶ手間が省けます。俗な言い方ではありますが「お買い得」です。
新井素子さんは、奇想天外SF新人賞コンテストで「佳作」に選ばれ作家デビューしました。受賞作は「わたしの中の…」そして当時16歳。僕と同年代です。
この賞の選考にあたり、選考委員の小松左京や筒井康隆が猛烈に反対する中、ひとり星新一だけが、新井素子の才能を高く評価し、最後には2人もその熱意に折れ、新井素子の佳作が決定したというエピソードがあります。
「文章が新しい、作品の構成も一番しっかりしている。ようやく素晴らしい才能が現れた…」と高評価の星に対し、
筒井康隆は「マンガの吹き出しのようなセリフ…、本当にこれを入選させて、あちこちの作品依頼に応じさせていいと思いますか?」
「文章が幼くてかわいらしいのを、星さんは文章がいいと勘違いしてるんでしょ(笑)」
文体について「ぼくなんかには、とてもそういう表現はできない。」と星がいえば、
筒井は「あたりまえですよ。星さんがこんなの書き始めたら、気が狂ったかと思われる。」
小松左京にあっては「ぼくはあまり感心しなかった…、(文体について)やたらと抵抗がある…、こういう殴り書きみたいなやり方で小説を書き始めるのには疑問がある…」
と散々な言われようです。
とにかく、筒井康隆、小松左京ともこの作品については大反対だった。とても有名な話です。
そしてデビュー後の新井素子の活躍はご存知のとおりです。後年、筒井康隆氏は「星さんはどうしてあの時、新井素子の才能を見抜けたのだろうか。」と回想しています。
この本には各章のラストに「星くずのかご」というエッセイが載っています。これは、「星新一作品集」の月報に書かれたもの(各巻の付録)ですが、ここで全てを読むことができました。



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