泣くもんか

4.0

昨今の若者たちは何故にあの様にすぐ泣くのだろうか。
12歳の時、兄と喧嘩をして泣いた。些細なことで原因は勿論忘れたが、後ろから羽交い締めされ随分苦しくって悔しくって泣いた。
その泣いている自分が更に悔しく、もう絶対に泣かないとあの日に誓い、それから僕は泣いていない。

「男は、生まれた時と両親が死んだ時の3回しか泣かないものだ!」という漫画の台詞があった。
中学2年生、2度骨折しても僕は泣かなかった。
中学3年生、クラスメイトを3回投げ飛ばして泣かしても僕は泣かなかった。
結婚式に幸せの絶頂で大泣きした妻、でも僕は泣かなかった。
子供が生まれてもドラマで感動しても妻に叱られても泣かなかった。

赤ん坊は腹が減れば泣く。眠くなっても泣く。目が覚めても泣く。何がなんでも泣く。泣くと言ったら泣くもんだが僕は泣かない。男は一度決めたら泣かない。それが男だ。

ところが今日日の若者は何であんなに泣くのだろうか?どうでも良い事でボロボロ泣く。何て軽い涙だ。泣くことに何の深みも無い。理想も哲学も美学も無い。嬉しくても悲しくても泣く。節操が無い。泣くために泣いているのか。お前はコオロギか。

僕はドラマで泣きそうになったらテレビを消すことにしている。その場を離れ唇を強く噛みしめ、話しを逸らし、とにかく泣かないための方法は全て試み50年間やり過ごしてきた。
目的達成には努力を惜しまないし、方法も手段も選んではいけない。
男は泣いちゃダメだ。泣かないと決めたら何が何でも泣かない。そんな涙ぐましい努力の末に今の僕がある。

でも時々意味もなく大泣きしたいときがある。歳のせいなのだろうか。分からないけど泣きたくなる。泣きの衝動から逃げるのがとても辛く泣きたいほどだ。もう思春期のあの日の禁を破ってもいいのだろうか。

 

星新一著「きまぐれロボット」には「あーん。あーん」というちょっと変わった作品が収められています。
子供向けの絵本のような小説です。
「泣くもんか」の雑文にひっかけてこの作品を紹介します。
小さなお子さんに読み聞かせたらきっと笑ってくれます。

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