作家たち

【SFという惑星を、星新一がパイロットとして発見した。小松左京がブルドーザーで地ならしをして新しい都市ができた。そこへスポーツカーで口笛を吹きながら筒井康隆が乗り込んできた…】

これは石川喬司の作った比喩ですが、もちろんSF界の実際はこんな格好いいものではなかった。ただ「古事記(日本SF編)」としてのSF惑星の始まりとしては良くできた神話です。未来的で宇宙的で、ファンとして崇め奉るSF世界にはピッタリのイメージだと思います。戦後の本格的SFはすべてここから始まったのです。次々と魅力的な作品を著したSF作家たちに愛を込めて紹介していきたい。


 星新一
1926年(大正15年)東京生まれ。本名親一。東京大学農学部卒。父は星製薬創業者星一。1951年父の急逝により星製薬会社の2代目社長に就任するが、悪化していた会社の経営紛争の末退陣。心身ともに疲れ果てた星は、三島由紀夫も加入していた「日本日本空飛ぶ円盤研究会」に入会。この会報に「円盤を警戒せよ」などの雑文を寄せている。風邪をひいた夜、レイ・ブラットベリの「火星年代記」を読み感動。作家の道に進む大きな出会いとなる。1957年、この研究会から同人誌「宇宙塵」の結成の話しが持ち上がり、真っ先に手を挙げたのは星であった。そして同人誌第2号に小説「セキストラ」を発表。「火星年代記」を読んだ4ヶ月後です。これが江戸川乱歩主宰の「宝石」に転載され、瞬く間に作家デビューとなる。星新一30歳の秋であった。戦後の日本におけるSFの幕開けはここから、星新一から始まりました。その後の活躍はめざましく、生涯に於いて1000編以上のショートショートを書き上げるという偉業を達成。SFを書き続けSFにすべてをかけた星新一は、1997年(平成9年)71歳でその生涯を終えました。

父 星一(星製薬創業者、星薬科大学設立)、祖父 小金井良清(学者学者)、祖母 小金井喜美子(歌人・翻訳者)、大伯父 森鷗外(医師、小説家)

全く以て、科学と文学の血筋のハイブリッド。その先にSF作家星新一が生まれました。


 筒井康隆
1934年(昭和9年)大阪府生まれ。本名同じ。同志社大学卒。1960年「お助け」でデビュー。天才鬼才、SF界のプリンスと呼ばれていた筒井先生も今や日本文学界の重鎮、最後の文豪と言われ、現在までに10を越える文学賞を受賞している。父は筒井嘉隆(動物学者)

そして、氏の才能は文学に留まらず、音楽、絵画、演劇と幅広い。


 小松左京
1931年(昭和6年)大阪府生まれ。本名小松実。京都大学卒。ミスターSF。1962年「易仙逃里記」でデビュー。その豊富な知識量、そして行動力から「コンピューター付きブルドーザー」といわれていました。2011年(平成23年)パワフルに駆け抜けたその生涯を閉じる。享年80歳。

 橫田順彌
1945年(昭和20年)佐賀県生まれ。本名同じ。法政大学卒。1970年宇宙通信「X計画」でデビュー。古典SFの研究者。明治・大正・昭和の未だ本格SFの時代が訪れる遙か昔にあって、SF的作品を残した先輩たちがいました。その作品を発掘、研究した功労者です。自身はハチャハチャSFとい特殊な分野を開拓。ハチャハチャという言葉は小松左京氏が命名したといわれています。
享年73歳

 新井素子
1960年(昭和35年)東京都生まれ。本名同じ。立教大学卒。1977年「あたしの中の…」でデビュー。

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