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ツバメのおもいで

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50数年前のこと、今は亡くなって久しい祖父が軒下のツバメの巣を落としました。
毎年、我が家を訪れたツバメの巣です。
ヒナが育つにつれ、巣の付近には白い糞が落とされる。それに腹を立てた末の行動だったのだろうか。

子供の頃、ツバメについての本を読みました。
ツバメは、南の国から2000㎞以上のも離れた日本まで、昼も夜も暴風雨の中もほとんど休まず命がけで海を飛び続けます。
運良く木の枝などの漂流物があれば、そこで一休みしながら日本を目指す。
その本には、ツバメが雨の中、海に浮かぶ木の枝か何かに止まり羽を休めているリアルな絵もありました。
どうしてツバメは、常夏の国から命を懸けてまでして日本に渡ってくるのだろうか?
とても不思議だと子ども心に思いました。

冬には東南アジアで過ごし、春には日本に飛んでくる。
餌になる虫の数は、日本に比べ絶対に南の国の方が多いのではないか。繁殖期になると、他の動物との競争になるため、餌の取り合いで競争相手の少ない日本に渡って来ると説明されていたが、どうも納得できない。ツバメほどの飛翔能力があれば、他のライバルたちに負けないでエサを捕え、子育てができると思うのですが。

僕はこのような不思議な習性がある場合「これは太古の昔、今は太平洋から消えてしまった幻の大陸の上で行われていた何らかの習性が未だに消えずに残っている」のではないかと考えたりします。

このような不思議な習性は、渡り鳥や周遊する魚類、陸上を旅する動物など。
海を渡る「アサギマダラ」という蝶もいます。
この蝶は、日本で孵化しし成虫になると沖縄を遙か彼方の台湾まで海を渡ります。
食べ物や繁殖のためというには危険すぎる旅ではないでしょうか。

まぁ、それはおいといて、なんといってもツバメはかっこいい野鳥です。
あの燕尾服と飛翔速度。通常は40~50km、緊急時には170~200kmで飛べるという。
僕はその姿に憧れました。

子供の頃に知った悲しいツバメの物語があります。
クリスマスで賑わう街の中に立つ「金ピカ」の王子像。
その王子様が身体に貼り付けてある金箔を貧しい家庭に配って欲しいとツバメに頼みます。

ツバメは早く南の国に渡らなければならない。でもその願いを叶えるため、一枚一枚金箔を貧しい家に届けます。
何度も何度も…冬がきて雪がチラつく街の空を。
やがて金ピカだった「王子像」はみすぼらしい姿になり、ツバメは力尽き寒さの中、王子像の足下で力尽き死んでしまいます。そんな悲しい物語に僕は涙しました。
ラストは王子様がツバメを天国に運んでいくという、キリスト教的終わり方でした。

ツバメの心をもつ僕は、子供の頃、泥を小さく丸めて、本物そっくりのツバメの巣を作って家の隅に置いてあげたこともありましたが、結局、あれ以来ツバメはわが家にだけ来てくれません。
祖父が巣を壊して今年に至る45年以上、一度も巣を作りに来ないのです。

あの時巣を壊されたツバメ夫妻は既にこの世にいない。
だから別のツバメが巣を作っても良いはずだが以来一度も来ない。
なんか言い伝えでもあるのか?
壁に書き遺したのか?
後世に語り継がれるほどの大きな出来事だったのか?
不思議で残念で仕方ない。

僕はこの歳になってもツバメを見ると大好きだった祖父を想いだします。

 

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