PR

【処刑】星新一/ 未来における死刑執行とは、その結末に待つものは…人は何に怯える

4.5

著者名   星新一
掲載作品集 「ようこそ地球さん」

 

未来の流刑地、火星に飛ばされた死刑囚が、ボタンを押せば水が一定量出てくる銀の玉を渡され、火星の廃墟を彷徨い生きていく。

死の恐怖に苛まれながら今日を生きていく。

 

 

そしてこの玉は、水が出てくるうちは生き延びられるが、無作為な回数がセットされていて、その時が来ると大爆発を起こし死刑が執行されるというものです。Xデイは誰にもわからない…

主人公はいつ爆発するか分からない死の恐怖に怯えながら、毎日毎日、生きるために玉のボタンを押し、水を手に入れ食事をしなければならない。
恐怖に震えながら、生と死の狭間で主人公が辿り着いた心の変化はどのようなものなのか…

 

星新一の奥様、香代子さんは、
「星はこんな悲しい作品を、ひとり夜中に書斎にこもって書いていたんだと思うととても悲しくなります」
この作品を読むたびに涙が出るといいます。

 

大袈裟な感情描写もなく、事件も起こらず、淡々と進んでいく物語に、人間とは、生きるとは…
毎日、食事のたびに「今度は終わりか、爆発か、あー良かった」そしてまた歩き出す。

そんな毎日を繰り返しながら、男は極限の精神状態で今日も生き、そして眠りにつく…

そして朝が訪れる。

「目がさめたの。同じことじゃないの。」と呟く銀の玉…

 

 

他の作家ならこの題材で中編小説として書き上げるところを、星新一は、その本質を見抜いた鋭い目でショートショートに書き上げて提示します。

 

昨今、言葉が多く、何から何まで説明して、個人的解釈を拒むかのようなポップソング的小説よりも、鋭く真実を見抜いた視線で書かれたショートショート。

上品で感情の強制などはない。それぞれの感性に任される優しさが滲み出る作品。
無駄も飾りもないからこそ、読者それぞれに読後感があるのだと思います。

 

短歌や俳句を、言葉が短いからといって子供向けのジャンルだと決めつける大人は存在するだろうか。
星新一の残したショートショートの数々は、長編、中遍小説となんら遜色のない文学作品に違いありません。

 

僕たちが生きるということは、どういうことなのだろうか。

誰しも寿命があり、いずれその時を迎えなければなりません。

元気で幸せな生活を過ごしていても先のことは分からない。
その門を曲がったところで事故に遭い終わりが訪れるかもしれない。
ただ、意識をしていないから怖くないだけです。

 

もし、明日12時ちょうどに死が訪れると知らされたら…
僕は何をするだろうか。誰もそれを知らないから笑って過ごせるのだ。
「3日後に死刑を執行する」という宣告と「20年後に死刑を執行する」のそれと、あなたはこの言葉に何を思いますか…

 
僕たちの死刑執行の期日は、まだ知らされていないだけです。

だから幸せを味わえる。

「生老病死」の仏教的苦悩も知らなければなんでもない。

毎日毎日、生を浪費していることも気づかずに楽しい明日を確信しています。

 

 

 

  

コメント

タイトルとURLをコピーしました